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アキアカネとウスバキトンボ

        9月24日
             昨夜、「ごろちんの森」(正式:「東浦自然環境学習の森」)の関係者の打合せがあったときの雑談の中で、
             「東浦には赤とんぼ(アキアカネ)はいますか?」との問いに、「たくさん飛んでいますよ。」との返事がありました。
             アキアカネは、ここ数年、全国的に減っていることと、私の住む地域でも、ここ数年稀にしか見れず、
             今年はまだ1頭も確認出来ていませんでしたから、いろいろお聞きすると、
             どうも赤とんぼ(アカネ属)の代表のアキアカネではなく、ウスバキトンボ属のウスバキトンボのようでしたので、
             多くのみなさんの参考に、両者の見分け方について書いて見ました。


              東浦で整備中の里山の愛称「ごろちんの森」は、水辺グループの人たちが使い出している愛称です。
               個人的には、「トトロの森」のようで可愛いい感じなのと、地域に根ざしたネーミングなので気に入っています。
               東浦では、セミの幼虫のことを「ごろち」などと呼んでいる地域があり、それらを反映し、より親しみがわくようにと
               「ごろちんの森」としています。  (名付け親:玉ちゃん)
               他には、「於大の里山」、「緒川の森」、「おおたかの森」などの名前も挙がっていますが、
               来春ごろには町の人たちによる人気投票で決める方向のようです。
                  


          アキアカネとウスバキトンボの見分け方
             ほとんどの方は、初夏から秋にかけて、原っぱや田んぼの上を飛び回るウスバキトンボを赤とんぼ(アキアカネ)と
             勘違いされているようですので、以下の見分け方を参考にして、近くの田んぼなどで確認し、
             身近な地域の自然環境の変化に関心を持ち、自分たちでも出来ることを実行に移していただければ幸いです。 
 
             なお、日本に20種ほどいる他のアカネ属の赤とんぼや、他のトンボについて更に詳しく知りたい方は、
             「神戸のトンボ」をお薦めします。青木典司先生のサイトで、とても信頼できます。


          アキアカネ (トンボ科アカネ属)
             赤とんぼ(アカネ属)の見分け方のポイントは、姿形の3ヶ所の特徴 (胸の模様、赤くなる部分、翅の特徴)や、
             生息場所、動き、止まり方、産卵の仕方などを観察することで種を判断します。

             6月の頃、田んぼで羽化したアキアカネは、暑さを避けるためか、夏の間は標高の高いところで過ごし、
             秋になると産卵のため麓へ降りて、田んぼの上を飛んだり、はざ干しの竿や、杭の先、電線などに止まっていたりする
             情景を、かつては全国各地で見ることが出来ました。


          〔見分け方の特徴〕  …写真の上で左クリックすると写真が拡大します。


             ① 胸の模様
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                    ↑ アキアカネには、♂♀とも、写真のように胸に黒くて太い模様があります。 (写真はアキアカネの未成熟♀です。) 
                      なお、ナツアカネ(下記)にも似たような黒い模様がありますが、アキアカネの場合、真ん中の上の部分は、先がとがっています。

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                    ↑ 胸の模様の似たナツアカネです。 真ん中の黒い模様の上の部分が平らです。 (写真はナツアカネの成熟♀です。)


             ② 翅の特徴
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                    ↑ 翅は透明で、下記写真のノシメトンボやミヤマアカネのような模様はありません。(写真はアキアカネの成熟♂です。)
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                    ↑ ノシメトンボ成熟間近い♀です。 翅の両端に黒褐色の班があります。
                      なお、このような模様のあるアカネ属には、ノシメトンボ、コノシメトンボ、リスアカネ、一部のマユタテアカネがいます。
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                    ↑ ミヤマアカネの成熟♂です。 翅の端部近くに褐色の班があります。

             ③ 色合い
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                    ↑ アキアカネの未成熟♀です。 全体に淡い色合いです。
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                    ↑ アキアカネの未成熟♂です。 ♀同様、繁殖可能な時期になるまでは、全体に淡い色合いをしています。
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                     ↑ アキアカネの成熟♀です。 成熟と共に、腹部の上面側が赤くなります。
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                    ↑ こちらはアキアカネの成熟♂です。 成熟と共に、腹部の全体が赤くなります。(尾に見える部分は腹部になります。)
                     よく似たナツアカネの写真を載せます。アキアカネと、どこが大きく違うでしょうか?
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                    ↑ こちらがナツアカネの成熟♂です。 アキアカネが腹部のみ赤くなるのに対して、頭、胸、腹部と、全身が真っ赤になります。

              ④ 止まり方
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                     ↑ 体を水平に保つようにして止まります。

              ⑤ 産卵の仕方
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                     ↑ 「連結打泥産卵」と言って、田んぼのように、水深のあまりない、じゅくじゅくした泥の中に、
                     ♂♀が連結状態で、腹部先端を、ちょんちょんとたたくようにして産卵します。
                     流れや、水深のあるところでは産卵しません。 (乾田化される前の稲刈りの済んだ田んぼが、最も適した産卵場所でした。)


               ウスバキトンボ (トンボ科ウスバキトンボ属)
                     初夏から秋にかけて、広々した田んぼや、原っぱの上などを、群れになって舞うアキアカネくらいの淡い橙色のトンボです。
                     ほとんどの人は、赤とんぼ(アキアカネ)と思っていますが、アカネ属ではなく、ウスバキトンボ属のトンボです。
                     お盆の頃、たくさん目にすることから、地方によっては「盆トンボ」や、「精霊トンボ」などとも呼ばれています。
                     甲子園で高校野球が行われているとき、テレビ画面に群れになって舞うトンボが写ることがありますが、あれがウスバキトンボです。
                     南方から海を渡って、世代交代しながら日本を北上して来る南方系のトンボです。
                     温暖化の影響なのか、現れる時期が年々早くなっています。
                     同じくらいのアキアカネと比べ、翅が薄くて大きくて、体のつくりが華奢になっていて、強く持つとつぶれます。
                     ただ、このことが、長い飛翔を続けられる鍵のようです。

             〔見分け方の特徴〕   …写真の上で左クリックすると写真が拡大します。

              ① 胸の模様と色合い
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                     ↑ 成熟しても赤くならず、やや橙色が濃くなる程度です。
                     胸の模様は、アキアカネのような黒くて太いはっきりした模様がありません。


             ② 群れによる飛翔
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                   ↑ 気流を捉え、長い時間、群れで舞っていることが多いです。ときに大群を作ります。  (写真は、刈谷市半城土で、嵯峨さん撮影)

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             ③ 止まり方       
                    ↑ 薄く大きめの翅の特徴を生かし、いつ見ても飛び続けていることが多く、止まっている姿は稀にしか見れません。 
                     止まるときは、横姿勢ではなく、ぶら下がるように縦姿勢で止まります。



             〔補足〕
                   トンボは、ちょっと見ただけで種を確定できることは少ないですから、普段から、種の特徴をしっかり観察することが大切です。
                   判らないトンボに出会ったときは、全体だけでなく、胸や腹部なども、アップで撮っておくと、同定(種の確定)に役立ちます。
                   それと、もうひとつ大切なことは、他の生きものでも言えることですが、どんな環境で、何をしていたか、何を食べていたかなどを
                   しっかり観察することです。
                   人間を含め、どんな生きものにも共通で大切なことがあります。
                   それは、「食う・寝る(休む)・(子孫を)残す」です。
                   生きものが生きていくためには、それらのための環境が存在することが大切なのです。
                   ある種のトンボは、植物の組織内に産卵しますから、水草などが消えれば、それらのトンボも姿を消します。
                   鳥でも哺乳類でも、昆虫でも、魚でも、「食う・寝る(休む)・(子孫を)残す」を理解することで、彼らに出会うことができるのです。
                   そしてまた、生きものたちの未来のために、私たち人間は、謙虚であらねばならないのです。
                   なぜなら、ほとんどの自然環境悪化に人間が関係しているからです。


                                                                                        (やまね)




 
by higashiura-satoy | 2010-09-23 08:33 | 知る・学ぶ
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